EC-02はヤマハ発動機が2005年から生産・販売していた、充電式バッテリーとモーターだけで駆動する原付一種(50cc自動二輪車)に相当する電動コミューターです。
このページではEC-02に関する基本情報と画像付きでの車体解説を元オーナーの私が紹介します。
EC-02 概要
ヤマハ発動機が2002年から販売していた電動コミューター・Passolに続く電動コミューターの第二弾として2005年にEC-02が発売されました。
バッテリー装着時の総重量がわずか約47kg(バッテリー未装着時約41kg)、ホイールベースもわずか93cmと超軽量かつ小回りの利く電動マシンで、最高速45km/hの動力性能、航続距離が実質約30km(満充電時)、騒音ゼロ、都市部の半径数km圏内の移動に最適なコミューターです。
車体はペンタゴン(五角形)をコンセプトにしたアルミダイキャストフレームに、交換可能な五角形のサイドパネルで覆われています。このサイズの車体に予備バッテリー収納スペースも確保され、そのスペースに予備バッテリーまたは専用充電器を入れて運ぶことも出来ます。
満充電時の電気代はわずか約16円で、ガソリンやオイル交換の費用も不要です。ハンドルは折りたたみ式で乗用車への積載やバッグに収納すれば電車での移動も可能です。
ヤマハ発動機が専用サイトを開設したりサイドパネルのオリジナルデザインオーダーメイドも受注したりとかなり力を入れて売り込んでいましたが、残念ながらバッテリーの深刻な不具合により全てのバッテリーが回収されたうえに改善済バッテリーの提供が遅れ、オーナーの希望があればヤマハ発動機がEC-02本体の回収にも応じることとなりました。
大手メーカーが本気を出した高性能かつ独創的な電動二輪車でしたが、わずか2年弱で販売終了となりました。
EC-02 カラーバリエーション
- シルバー
- マットブラック
引用元 : https://www.yamaha-motor.co.jp/
EC-02 公式カタログ
ヤマハ発動機株式会社 製品サイト (yamaha-motor.co.jp) から引用
EC-02 各部詳細(画像付き)
外観・デザイン
シートレールと一体化した超コンパクトなアルミダイキャストフレームに小径ホイールの組み合わせ。
ペンタゴン(五角形)をコンセプトにしたデザイン。
サイドパネルやキーもペンタゴンで統一されている。
スイングアーム一体型の動力ユニット
ヤマハ発動機がYIPU(ヤマハ・インテグレイテッド・パワー・ユニット)と称していた超薄型パワーユニット。
超扁平面対向型ブラシレスDCモーター・超小型コントローラー・遊星減速機・ドラムブレーキ等を全て片持ちスイングアームと一体化させている。
このスイングアームにセンタースタンドが直に装着されている。
サスペンション
[前] 一般的なテレスコピック倒立フォークとカバーの組み合わせ
[後] シングルショック
バッテリー・充電器
EC-02の重要な動力源である専用リチウムイオンバッテリー。
着脱式でバッテリー本体に充電容量が表示される。車体に搭載したままでも取り外してもAC100Vから充電可能で、満充電まで約6時間。
EC-02本体には予備も含めてこのバッテリーを2本収納出来る。
タイヤ
[前] 60/100-10(33J) チューブタイプ
[後] 60/100-12(36J) チューブタイプ
メーターパネル
車体上面にある液晶メーターパネル。オレンジのバックライトが常時点灯する。
折りたたみ機構
シート下に常備されている六角レンチでハンドルを折りたたみ、ステップは工具無しで折りたたみが可能。室内での保管や四輪車への車載を想定している。
ミラー
新車販売時は右側ミラーのみが装着されている。
「最高速度50km/h以下の二輪車は右側ミラーのみ装着でもかまわない」という法に沿ったもので合法。左側にもミラー取付穴があり、ほとんどのオーナーは左側ミラーを後付けしていた。
EC-02 加速・最高速
最高速は本体で制御(制限)されていて、モード切替により最高速が変わります。
NORMALモード 30km/h
POWERモード 45km/h
EC-02 発売当時の様子
EC-02は2005年04月11日に発表、5月21日より全国発売されました。
2005年04月11日発表
ヤマハ発動機株式会社は、100%電気で走る“EV(Electric Vehicle)”の第2弾モデルとして、ヤマハエレクトリックコミューター「EC-02(イーシーゼロツー)」(原付1種)を2005年5月21日より全国発売します。また当社Webサイトでは4月27日より先行予約を開始します。
遊び心をくすぐるデザイン・機能を搭載し、楽しさも追求 排出ガスゼロ、100%電気で走る ヤマハエレクトリックコミューター「EC-02」(原付1種)発売 – 広報発表資料 | ヤマハ発動機株式会社 (yamaha-motor.com) から引用
大手バイクメーカーとしてはほとんど販売されていなかった電動コミューターが斬新なデザインで登場し、当時は珍しかったネット販売(ネット注文・決済→指定の正規代理店で納車)にも対応していました。
EC-02専用サイトが開設され、詳細な解説や開発者インタビューも掲載されていました。
引用元 : http://www.yamaha-motor.jp/pentagon/
ワイズギアから専用アクセサリーも販売され、専用バイクカバーや専用キャリングバッグもラインナップしていました。
引用元 : http://www.ysgear.co.jp/mc/special/ec02/index.html
五角形(ペンタゴン)のサイドパネルをお客様のオリジナルデザインで受注生産するオーダーメイドも行われていました。
引用元: http://www.pentagon-atelier.net/
MOMO DESIGN、RIMOWA、山崎まさよし等とコラボしたデザインのサイドパネル装着モデルも限定販売され、ヤマハ発動機の並々ならぬこだわりを感じさせました。
EC-02 リコール→生産終了
2006年10月には専用バッテリーがリコールで回収を余儀なくされました。
2006年10月5日発表
EC-02、Passol-Lに関するリコール情報 – 重要なお知らせ | ヤマハ発動機株式会社 (yamaha-motor.co.jp) から引用
不具合の部位(部品名)
電気装置(電動機駆動用バッテリー)
基準不適合状態にあると認める構造、装置又は性能の状況及びその原因
電動機の駆動用バッテリーにおいて、製造工程が不適切なため、~(中略)~短絡部の発熱により、電解液等が気化し内部の圧力が高くなり、高温の白煙とともに電解液が噴き出し、最悪の場合、火災に至るおそれがある。
その対策済みバッテリーも予定より大幅に供給が遅れることとなりました。
2007年2月9日発表
正規対策品のお届け予定時期を平成19年2月頃とご案内いたしておりましたが、以下記載の理由によりお届けできる時期を延期せざるをえない事となりました。お客様にはお約束の日程が変更となりますことにより、多大なご迷惑をお掛けいたします事を心よりお詫び申し上げます。
【お届け延期理由】
対策品の製造工程において前回とは異なる不適切な点がある事が判明いたしました。そのため、何よりもお客様の安全を優先すべく、再度の改良を織り込んだ対策品を新たに製造することといたしました。【変更後お届け予定時期】
ヤマハ電動コミューターEC-02/Passol-Lご愛用のお客様へ ご愛用車のバッテリーお届時期延期のご案内 – 広報発表資料 | ヤマハ発動機株式会社 (yamaha-motor.com) から引用
お客様へ正規対策品をお届けできる時期は平成19年6月中旬頃を目処としております。
肝心の動力源(バッテリー)を失ったEC-02は不動車となり、ヤマハ発動機はオーナーの希望に応じてEC-02本体の回収および全額返金を受け付けることとなりました。
このバッテリーリコール対応の長期化をきっかけにしてEC-02は2年弱で生産販売終了となりました。販売期間が短かったことに加えて私のように本体回収に応じるオーナーも多かったため、中古車両のタマ数は少なめとなっています。
専用バッテリー(3D2-8212A-00)・適合タイヤは現在(2023年)でも新品購入可能で、EC-02本体が正常に動作しているならば今後しばらくはEC-02の走りを楽しめるかもしれません。
EC-02 スペック
車名(コード) | EC-02 (SY02J) |
メーカー | ヤマハ発動機 |
生産国 | 日本 |
全長×全幅×全高(走行状態時) | 1385×620×935 (mm) |
全長×全幅×全高(折りたたみ時) | 1385×362×737 (mm) |
シート高 | 715 mm |
軸距 | 920 mm |
最低地上高 | 115 mm |
最小回転半径 | 1.6 m |
車両重量 | 47kg (バッテリー未装着時41kg) |
フレーム形式 | アルミダイキャストフレーム |
スイングアーム | パワーユニット・ブレーキ一体型片持ちスイングアーム |
サスペンション(前/後) | (前)テレスコピック / (後)ユニットスイング |
前ブレーキ(前後) | ドラム(リーディングトレーリング) |
タイヤ | 前60/100-10(33J) 後 60/100-12(36J) チューブタイプ |
原動機種類 | 超扁平面対向型ブラシレスDCモーター(交流同期電動機) |
原動機打刻型式 | Y802E |
最高出力 | 1.6 HP (1.2kW) / 2250 rpm |
最大トルク | 7.5Nm (0.76kgfm) / 310 rpm |
トランスミッション | 遊星減速機 |
ヘッドライト | 白熱バルブ24V(35W/35W×1) |
バッテリー | 専用リチウムイオンバッテリー 25V-24Ah |
バッテリー充電電源 | AC100V |
充電時間 | 80%まで約5時間 / 100%まで約6時間 |
1充電走行距離 | 約43km(30km/h定地走行テスト値/標準モード) |
乗車定員 | 1名 |
メーカー希望小売価格 | 209790円 (税込、2005年販売当時) |
EC-02 元オーナーとして
航続距離が短くスピードも出せないこともあり実質1年間程度で約700kmしか走れませんでしたが、今となっては貴重なレア車を所有出来たことは貴重な体験でした。
リコール回収の際に自宅までお越しいただいたヤマハ社員さんもバイクの話で盛り上がりつつも申し訳なさそうな表情を浮かべていて、ヤマハ発動機の公式サイトに掲載された生産中止のニュースリリースも無念の思いが感じ取れました。
開発者とデザイナーの熱意が感じられる渾身の力作だったEC-02が補助金込み本体価格が実質15万円程度で買えたことはかなりのバーゲンセールだったと思います。
今では手放してしまったことを少々後悔しているバイクでもあり、現在残っている中古車両も末永く生き残って欲しいと願います。
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