[bike]台湾ツーリング2013 臺灣機車旅遊 – “その後” 台湾(中華民國)交通部公路局の御招待により講演を行った件について

台湾ツーリング2013

台湾ツーリング2013/臺灣機車旅遊2013の動画公開後、台湾(中華民國)交通部公路局からご招待を頂き公路局本庁舎(台北市萬華區)にて講師として講演をさせていただきました。
私にとっては個人的な趣味で制作した動画がきっかけとなり休暇中の旅行先である台湾で参加された講演です。しかし、台湾(中華民国)の中央省庁である交通部公路局の本庁舎内で業務時間中に開催され、職員の皆様が準備と進行を担当された公式行事であり、私は公路局から報酬を受け取りました。因って台湾人の皆様にはこの講演の概要を知る権利があります。この講演に興味を持っている日本人の友人もいますのでここに簡単なレポートを残しておきます。

交通部公路局(台湾)について

中華民國 交通部 公路局 公式サイト
http://www.thb.gov.tw/

『交通部』は台湾(中華民國)の行政機関であり、日本の国土交通省に相当する中央官庁です。
公路局はその交通部直轄の行政組織で、台湾国内の一般道の建設・維持・管理を主とする他、自動車のナンバー発行、車両検査、免許証の発行等の業務を管轄しています。

名称について

私が講演させていただいた2014年当時は公路總局という名称でした。
2023年9月に名称変更があり現在の名称は公路局です。
この記事内では表記を公路局で統一しました。

講演開催に至る経緯

私が制作した動画「台湾ツーリング/臺灣機車旅遊」が公開後から台湾国内でも知られるようになり、日本人よりも台湾人の皆様から多くの反響を頂くようになりました。

2014年初め、交通部公路局から公式に連絡が届きました。今回の講演とは全く別のご依頼でしたが、私が公私共に多忙で「台湾ツーリング2013/臺灣機車旅遊2013」の映像制作も最終回まで完成していない時期でありこの件については一旦保留となりました。

一連の映像制作と公開が完了し8月14~17日に個人的に台湾旅行に行くことを伝えると、あらためて「台湾滞在中に公路局で講演をお願いします」というご依頼を受けました。打ち合わせの結果、2014年8月15日午後に交通部公路局の本庁舎内で私を講演者とする講演の開催が決まりました。急いで講演の準備を済ませ8月14日には日本から台湾に渡航しました。

講演当日の様子

8月15日13:00、公路局本庁舎(台北市萬華區)に到着し入口ホールで担当職員さんに出迎えていただきました。

入り口ホールの巨大モニターには私の動画のスクリーンショットと講演の告知が表示されていました。

公路交流座談會
時間 : 103年8月15日(2014年8月15日) 下午2點(午後2時)
地點 : 2樓演講廳(場所 2階カンファレンスルーム)
講座 : の先生(講演者 【の】さん)
請同仁準時於下午1時50分前入座(1時50分までに着席下さい)

ホール横の待合室で本日お世話になる職員の皆さんにご挨拶してから通訳を紹介されました。通訳担当は台湾の観光業界で長く活動されている日本人の山崎肇さんでした。何度も打ち合わせの連絡をし合っていた公路局職員の王姿玫さん、その打ち合わせのメッセージを日本語翻訳して私に届けていた職員さんとはここで初対面。早速準備に取り掛かりました。

私からは事前に「講演中に動画を上映したい」と要望を伝えてあり、大画面スクリーンと視聴覚機材が揃っているこちらの会場を用意していただけました。日本から持参した自作Blu-rayディスクの再生確認と上映順序の打ち合わせ、ステージ横のノートPCの動作確認、通訳の方と講演進行の打ち合わせを済ませました。報酬受け取りの書類作成もここで行いました。

開演直前に公路局の趙興華局長が会場入りされ、控室でご挨拶と記念写真の撮影が行われました。

講演の内容

開催概要は以下の通りとなりました。

14:00開始~16:00終了予定
聴講者は約100人(公路局職員と民間団体メンバー数人)
講演80分+質疑応答40分=計120分

第一部 – 挨拶、自己紹介

私の名前、住んでいる場所、台湾渡航歴等の自己紹介をしました。

第二部 – 動画上映

この講演のために制作した動画を2本上映しました。

動画1-「台湾ツーリング2009/2011/2013ダイジェスト」
今まで制作した3部作(2009/2011/2013)の名場面を組み合わせ、自己紹介も含めて動画制作に至る過程を約20分にまとめた動画を上映しました。

動画2-「ツーリング動画 日本語版/中国語版の比較映像」
非公開のまま放置してあった「台湾ツーリング2011/臺灣機車旅遊2011(中国語字幕版)」の一部を、既に公開済の日本語字幕版と比較した映像を上映しました。

上映の合い間に、台湾へ旅行することになった経緯、動画の制作方針、今後の台湾関連動画の制作についてお話しました。
動画上映を終えた頃に趙興華局長がご多忙のため途中で退席されました。私は局長から記念品を頂き記念撮影が行われました。

第三部 – 台湾の道路交通についての講演 & 質疑応答 

5分の休憩を挟んで第三部が開始されました。

台湾の道路交通についての私見

台湾一周ツーリングを3回行った実体験を基に、日本の道路での運転経験と比較した台湾の道路交通について、私が台湾で撮影した車載動画を資料として上映しながら個人的な意見を述べました。また、参加者の方から私に対しての質問に答える質疑応答の時間が設けられました。
お話した内容を短くまとめると以下の通りです。

1.台湾の現実的な車線設定

「台湾の道路を走っていて最も素晴らしいと感じたのは『機車専用』(小型バイク専用の車線)です。これがあったおかげで台湾全土を安全に走行出来ました。場所によっては自転車専用車線もあり、台湾は非常に現実的な道路設計をされていると思います。」
「日本の道路では二輪車や自転車の専用車線はほとんど無く、渋滞しても四輪車と一緒に渋滞に嵌ることになり、四輪車の狭い隙間を無理にすり抜けするバイクも多いのが現状です。」
「日本には人がほとんど住んでいないような地方の県道にも広い歩道が敷設されたりと実際の交通状況には合わない無駄な設計の道路があり、バイクや自転車の専用車線がある台湾はとてもうらやましいと思います。」

2.台湾人がバイクに乗るときの安全装備不足について

「私が台湾で撮影した車載動画を日本の友達に見せたところ、『なんでこの人達(スクーターに乗っている台湾人)はヘルメット被ってないの?』と言われました。」
「日本では一人でもヘルメット無しで走っているライダーがいると非常に目立ちますし、警察に見つかればパトカーや白バイがサイレンを鳴らして追尾され停車させられます。日本人としてはヘルメットを被らないライダーがいるだけで違和感を感じます。」
「私も日本ではヘルメットとプロテクター付きジャケットを装備してバイクに乗っています。ヘルメットは着用義務があり、ジャケット着用義務はありませんが自主的に着ています。動画にも写っていたとおり台湾ツーリングしたときも同じ装備をしていました。」
「こちら(講演会場)にいらっしゃる皆さんもバイクに乗る方は多いでしょうし、ご家族やお友達も乗っているはずです。私にも台湾人の友人が出来まして、ほぼ全員がバイクに乗っています。そんな台湾人の皆さんが万が一事故に関わったときに、少しでも生命や身体へのダメージを減らすためにヘルメット着用義務の遵守を是非ともお願いしたいと思います。公路局の業務とは直接関係の無いお話ではありますが、大事なことなのでお話させていただきました。」

質疑応答

参加者の方から受けたご質問と私の回答の要旨は以下の通りです。

Q
「実際に走って良かったと思える台湾の道路はどこですか?」
A

「太魯閣から合歓山に繋がる中部橫貫公路です。標高3275mの武嶺まで自家用車を運転出来るような舗装路は日本にはありません。日本で同じくらいの標高にある富士山八号目(約3100m)には舗装路はありませんし宿泊手段は山小屋で雑魚寝です。台湾では合歓山付近の標高3150mに松雪楼という立派なホテルがあり私も宿泊しました。日本人としてはあの標高までスクーターで自走してホテルに宿泊出来ることは大変な驚きです。
もう一つ、まだ走り切ったことはありませんが南部橫貫公路です。八八水災で被災した現場を走ったときは日本の震災地を思い出して心が痛みました。南部橫貫公路が完全に復興されたら横断ツーリングをしてみたいと考えています。」

Q
「実際に走った台湾の道路はいかがでしたか?」
A

「スクーターが多く走っている地域には機車専用(スクーター専用車線)が広く設けてあり、逆に交通量が少ない地域には車線が狭くなっていて、実際の交通量を反映した現実的な設定がされていて走りやすいと感じました。」

Q
「台湾ツーリング動画の制作にはどれくらいの時間がかかりましたか?」
A

「2009年版は約3か月、2011年版は約6か月、2013年版は約10か月かかりました。2013年版は牡丹社事件等の歴史考証が必要なシーンが多く中国語字幕の作業量も多かったため特に時間がかかりました。」

Q
「日本の大型二輪免許を取得するにはどれくらいの時間がかかりますか?」
A

「日本でバイクの免許を取る方法は2通りあり、民間の自動車学校で取得する方法が現在の主流です。何も免許を持ってない人であれば実技だけで30時間以上の受講が必要です。
もう一つの方法として警察直轄の試験場で取得する方法もあり、以前はこの方法でしか大型二輪免許が取れませんでした。時間はかかりませんが非常に難しい試験で、私が東京(鮫洲)の試験場で受験したときは受験者50人のうち合格者が私を含めて3人しかいませんでした。」

終演

質疑応答を終えてほぼ予定通りの16:00頃に終演となりました。
終了後に参加者の方々や公路局の皆さんと記念撮影をしてホテルに戻りました。


講演を終えて

2005年から【の】と名乗り、ほとんど身元を明かさず個人サイトや動画投稿サイトで活動してきた私にとって、初めて身元を明らかにして実名も顔も晒して臨んだ記念すべきイベントでもありました。

まず驚いたのが、【の】←このように名乗る身元不明の外国人である私宛に、台湾の国家行政機関である公路局から直接連絡を頂いたうえで業務に関係するご依頼を頂いたことです。
ご依頼をお断りして身元を明かさず今まで通り匿名で活動を続けるか、身元を明かして表に出て行くか相当悩んだ末に、私の動画を高く評価していただいた台湾人の皆様と直接対面出来る機会を無にしないため講演の参加を承諾しました。

道路交通に関しては全くの専門外であり台湾渡航歴わずか3回の私が、台湾で道路交通を担当する行政機関に勤務する職員さんや専門家の方々を前にして2時間も講演をしなくてはならなくなりました。しかも講演が決まった時点で渡航までわずか3週間、仕事も連休前で忙しかったため準備をする時間がほとんどありません。
「動画がきっかけで招待されたのだから、講演で動画を上映しよう」と急いで動画を制作したものの、台湾人の皆さんの前で上映する動画には当然ながら中国語字幕は必須です。2013年版で中国語字幕を担当していただいた元台湾駐在日本人の方にもご協力頂き中国語字幕を急ぎで準備していただけました。台湾渡航の前日深夜に動画が完成、当日の進行表も急いで作って公路局へメールで送り、講演前日に台北に到着してもバイク店を経営する友人に挨拶だけしに行ってすぐにホテルに戻り、部屋に篭りっきりで講演の原稿を書き上げました。原稿がおおよそ出来上がったのが講演2時間前で、準備が間に合わないんじゃないかとかなり焦りました。

講演会場ではスーツを着た国家公務員が会議室で勢ぞろいするような場面を想像していたのに、集まってくる皆さんは私服姿ばかりでスーツにネクタイをしている姿はほとんど見られませんでした。講演中もスマホで私の写真を撮ってSNSに投稿しているほど自由な雰囲気でした。
通訳の手配は公路局に全てお任せでしたので交通部専属の台湾人通訳の方が担当していただけると思い込んでいたら、観光業界で仕事されている民間の日本人が通訳として招待されていました。おかげで私の意図や心情も汲み取った通訳をしていただいたようで安心して講演に集中することが出来ました。
講演を終えてから知らされたことですが、この講演「公路交流座談會」は主に大学教授クラスの講演者が演壇に立つ行事であり、外国人が講演を務めたのは私が初めてだったそうです。

普段は人に話を聞かせるよりも他人の話を一方的に聞くことが多く、話をしている途中で割り込まれることも当たり前な私にとって、誰かが自分の話を集中して聞いていただけるという非常に貴重な体験をすることが出来ました。思い返せば講演の内容や段取りで多々反省する点はありますが、今まで直接お会いすることがほとんど無かった台湾人の動画視聴者の皆さんと直接会って交流が出来ただけでも大きな収穫でした。

前述の通り、今回の講演で私は公路局から報酬を受け取りました。まさか報酬が出るとは思っていなかったので渡航前の打ち合わせの段階で報酬の連絡があったときは驚きました。
講演当日に報酬受け取りの手続きをしている最中、通訳の山崎さんに「報酬は要らないので何かの寄付に回していただくことは出来ますか?」と相談したところ、「その報酬を今から寄付に回すとなると面倒な税金の計算をして余計な書類を揃える仕事が増えるだけだから受け取っておきなさい」とアドバイスされ、素直に受け取りました。金額はおおよそ”台北のホテル二泊分”くらいです。次の台湾旅行に使わせていただきます。

私への最初の連絡から一連の準備を担当し、私からのわがままなリクエストにも適宜応えていただいた交通部公路局人事室の王姿玫さん、通訳の山崎肇さん、私を招待して講演の場を設けていただいた公路局職員の皆様、参加者の皆様、中国語字幕の制作だけでなくその他の相談にも乗っていただいた元台湾駐在日本人の方には深く感謝を申し上げます。
公路局の皆様とはあまり交流を持てないままだったのが残念です。またお会いできることを楽しみにしております。

【の】

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