[bike]中途半端な135ccのバイクを選んだ理由

YAMAHA SPARK135コラム

ヤマハの135cc小型バイクSPARK135に乗っていました。

135ccという珍しい中途半端な排気量のバイクを選んだことに対し、次のような疑問を度々言われました。

135ccなんて中途半端な排気量を選ぶ理由が理解できない。
125ccなら税金・保険・維持費が安くなるのに135ccを選ぶのは損。
135ccでは高速道路を走るのなら性能不足だから最低でも250ccを選ぶべき。

SPARK135の購入を検討している人からも表現は違えど似たような質問をされました。

SPARK135の購入を考えています。
125ccと比べて税金・保険・維持費が高くて損した気になりませんか?
250ccと比べて性能不足で高速道路を走るのは怖くないですか?

言いたいことは理解出ます。

「250ccと同額の税金や保険料を払って125ccクラスのような小さくて非力なバイクに乗る→その小さくて非力なバイクでは高速なんか走りたくない→だから135ccのバイクを選ぶメリットが思いつかない。」

要約するとこのようなお考えなのでしょう。
それでも私は熟考と試乗の末にSPARK135を選び、同時に所有していたもう1台の大型バイクに乗る機会が激減するほど気に入って乗り回し、手放してから何年も経った今でも自分の選択が間違っていなかったことを確信しています。
その理由を出来るだけ分かりやすく説明します。

135ccは125cc・250cc両方のメリットを共有している

先ずは各排気量別にその特性を表にまとめてみました。

この表を見てメリットとデメリットをどう捉えるかで意見が分かれると思います。
特に「135ccバイクでは非力で小さく高速道路なんて乗れない」、というご意見とは正反対の考えを私は持っていて、SPARK135の最大のメリットは「125ccクラスの大きさのバイクで高速道路を走れること」に尽きます

125ccがどんなに税金や保険が安くても高速道路に乗れないのであれば無意味。当時は高速道路を快適に走れる大型バイクを既に持っていて、大きさや性能を求めてわざわざ250ccを増車する必要がありませんでした。私としては「125ccクラスの大きさのバイクで日頃の足として使い、必要最小限の範囲で高速道路も走りたい」という条件で増車を考えていました。

135cc特有の経費と維持費に納得できるか

次に、経費や維持費等のおカネに関わる問題について説明します。

「250ccと同額の税金と保険料を払うのはもったいないと思わないの?」

まずは125ccと135ccの経費について比較表をまとめてみました。

125cc(原付二種)135cc(軽二輪)
非課税重量税中古車は無料(新車取得時4900円)
2400円軽自動車税(1年間)3600円
6910円~2662円自賠責(1~5年間契約)7100円~2840円
24800円(ファミバイ特約)任意保険(1年間)27000円
0円(走行出来ない)高速道路料金有料(軽自動車等・二輪)
※1 金額は東京海上日動公式サイト等を参考に2023年時点での数値を抜粋
※2 125ccのファミリーバイク特約の金額(人身傷害型)は東京海上日動公式サイトから抜粋
※3 135ccの任意保険額は自分が実際に支払っていた額をそのまま記載

現在は135ccバイクを新車で購入する機会はほぼ無いとしてその他の経費を比較します。
125ccと135cc(中古車)では共に重量税負担は無く、納車後の経費(軽自動車税+自賠責+任意保険)は135ccのほうが年額で約4000円高くなります。ちなみに、ファミリーバイク特約は人身傷害型ではなく自損傷害型を選ぶと更に安くなります(その代わり保証範囲と保険支払額の条件が悪くなります)。
125ccバイクより高い経費(約4000円)を余計に払ったうえで、高速道路や有料道路を走るときは更にその料金を払うことになります。135ccバイクの最大にして唯一のメリットが高速道路走行ですから、このメリットに対して経費差額分のデメリットを負担する価値があるか否かが判断の分かれ目になります。

高速道路走行可能のメリット(安全、時間短縮、利便性)

金銭負担のデメリット(年間約4000円の余計な経費+高速料金)

このメリット/デメリットに納得出来るかどうかはライダー個々の判断によることとなります。
前述の通り、私個人としては「125ccクラスの大きさのバイクで高速道路を走れること」に十分な価値があると判断したため無駄な出費とは考えていませんでした。
夜間に首都圏内で片道30~40km程度の移動をすることが多く、夜間の一般道を信号・交差点・歩行者・自転車等に注意しながら走るより首都高速で流れに乗って移動するほうがずっと安全でした。また、ツーリング先では一般道では無駄に遠回りになったりそもそも一般道が予期せず通行止になったときには、高速道路を一区間だけ乗って回避が出来たこともありました。
わずかな金銭負担と引き換えにそのコストを超える安全時間短縮・利便性が得られてメリットだらけでした。

東名高速道路IC入口で撮影

中途半端な135ccバイク(SPARK135)の存在を知ってから購入するまで

私も最初は高速道路も走るための小型250ccバイクを条件に増車することが前提だったため125ccは選択肢に無く、バイク選びを始めた頃の250ccクラスはまだビッグスクーターブームの余韻が残る大きめのモデルばかりで、どのモデルも買う気になれませんでした。

その頃、たまたま旅行先のバンコクの路上でSPARK135という未知のバイクを見つけてしまい、帰国してから調査したところスーパーカブとほぼ同じ寸法・車重のバイクで高速道路に乗れることと、日本国内の個人店舗で購入できることも判り試乗もしました。ちょうどバイク業界はキャブレターからインジェクションへの転換期で、タイミングよくモデルチェンジされたEFI仕様が発売されたことが決め手となり、2008年に並行輸入車として新車購入しました。

中途半端な135ccバイク(SPARK135)を選んだ結果

日本語どころか英語でさえも他オーナーによるレビューや情報がほとんど無い状態でついに中途半端な135ccバイクを買ってしまった後に気付いた点を挙げます。

良かったこと

・コンパクト
・軽い
・排気音が静か
・短距離平地であれば高速道路走行ほぼ問題無し

スーパーカブと比べて数cmしか変わらない寸法・数kgしか変わらない車重で、押し歩きは楽々、駐輪場では狭いスペースでも容易に停められました。足つきも良くUターンも難なくこなせて一般道走行は至極快適でした。排気音は50ccスクーターよりも静かで大型バイクのように周囲に気を遣う必要もありませんでした。
日常生活の道具として最高に使い勝手が良く、135ccを選んでしまった不安はほぼ消え去りました。

不満だったこと

・加速が遅い
・上り坂でスピードが出ない

試乗した時点で分かってはいたものの肝心の高速道路走行は想像以上にパワー不足でした。
SPARK135のエンジンは12.6ps。125ccスクーターよりはマシな程度で高速道路を走行出来る乗り物としては最弱レベルです。
それでも100km/h巡行を維持するだけの性能には達していたので”平坦な高速道路”を走っているときであれば危険はほとんどありませんでした。そもそも近所の足代わりのつもりで買ったため利用する高速道路といえば首都高速ばかりで100km/h出す必要が無く、足つきが良く中低速走行が得意なSPARK135にとって渋滞やノロノロ運転が多い首都高速ではむしろ運転しやすいほどでした。

さて、”平坦な高速道路”と明記したのは理由があり135ccバイクでは高速道路上での加速性能登坂能力が絶望的に足りていませんでした

加速
合流車線が極端に短かったり本線の右車線側から合流する高速ICは最も苦手で、首都高速にはそんな出入口が多く特定のICでは毎回のように合流に難儀していました。

登坂能力
勾配10%程度の上り坂ともなるとトップギア(4速)では失速して停車しそうになります。一度だけ箱根ターンパイクを走ったときは上り坂で3速アクセル全開でも40km/hくらいしかスピードが上がらず、制限速度遵守の後続車にさえすぐに追いつかれ何度も路肩に停車して道を譲りました。

箱根ターンパイク 御所の入駐車場で撮影

135ccバイクでもほとんどの高速道路はおおよそ問題なく走れましたが、それでもパワー不足を考慮すべき場面に何度も遭遇しました。ただし、どうしても高速道路を速く走りたかったり坂道を余裕で駆け上りたいときは同時に所有していたもう一台の並以上に速い大型バイクに乗ればいいだけで、135ccバイクが何でもこなせる万能選手だと勘違いしなければ余計な不満も抱えることもありませんでした。

中途半端な135ccバイク(SPARK135)について最大の課題

ここまでは135ccバイクという排気量に関わるコスト・法的制約・実用上の課題等を挙げましたが、どれも大きな課題ではありませんでした。それよりももっと大きな課題があるからです。

日本で正規販売されず日本国内の登録台数も極端に少ないSPARK135についてよく聞かれた質問。

「そんなマイナー車に乗ってて整備と維持は大丈夫なの?」

金銭的なコストは多少の財力で簡単に解決出来ますし性能不足については工夫次第でほとんどの場合で対応可能です。
最大の課題は圧倒的な日本語での情報不足車体維持に必要なパーツ入手でした。

ヤマハ発動機(の海外法人)が販売するバイクなのに日本国内ではメーカーから保証やサポートも受けられず、日本語マニュアルも無く純正パーツの一部は日本国内で入手困難です。SPARK135に限らず正規販売されていないマイナー車は整備と維持に障害が多くて当たり前です。

それでもSPARK135(とその兄弟マシン)は国外で数百万台販売されたヤマハの大ヒット作で、モデルチェンジを繰り返しながら一部の国では現在も販売が続いています。車体維持に必要な純正パーツのほとんどは今でも供給されていますが、現地通販サイトから英語を使って注文し数百円のパーツに数千円の送料を払って個人輸入をしていました。日本国内で入手出来る互換性のあるパーツを探せば安く簡単に入手できますが、その互換性を調べるだけでも一苦労でした。

まとめ

135ccバイクを中途半端または最適解と感じるかはライダーの価値観次第。
・最大のメリットである高速道路走行のためなら多少の金銭的コストは気にならない。
・高速道路走行は工夫が必要な場合があってもおおむね問題無し。
・最大の課題は排気量ではなくマイナー車としての手間。
SPARK135を選んだ自分の選択は正しかったことを今でも確信している。
・他人には135ccバイクをお勧め出来ない。

以上がこの記事の冒頭に記した疑問に対する私なりの回答です。
ここまで書いても理解されることは期待していませんし、そもそもごく個人的な趣味の乗り物について他人の評価を気にしていたら135ccバイクなんて選ばなかったでしょう。

現在は全世界で唯一マレーシアで135LC(SPARK135後継モデル)が販売されるのみとなり日本国内で135ccバイクの新車を入手することは困難となっていますが、135ccバイクと同じメリットを持つ150ccクラスのバイクのラインナップは日本でも豊富になっています。

「125ccクラスの大きさのバイクで日頃の足として使い、必要最小限の範囲で高速道路も走りたい」という条件を満たすバイクは、今では日本国内で販売されている150ccクラスから選べるようになりました。SPARK135に興味をお持ちの方は無理にSPARK135の中古車両を探すよりも150ccクラスの国内正規販売車をお勧めします。

そんな私は現在150ccバイクに乗っています。

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