[bike] aprilia FUTURA RST1000 (アプリリア フツーラ) 中古車選びの注意点

aprilia RST1000 FUTURA

前記事で解説したRST1000 FUTURA (フツーラ)は、アプリリア(aprilia)が2001~2003年に生産販売していたバイクです。

FUTURAは2003年の生産終了からかなりの年月が過ぎ、今では経年劣化の進んだ中古車両でしか入手出来ません。そこで、FUTURAに興味を持ち中古車両の購入を検討している方に向けて元オーナーの私が中古車選びのポイントと特に留意すべき点、整備情報、その他参考情報を紹介します。

FUTURA中古車両への絶望的なサポート体制

まず結論としてメーカー公式のサポートやアフターサービスは全く期待出来ません。
極めて良心的な販売店や整備専門店に頼れる場合があればラッキーな程度です。

日本国内におけるFUTURA新車販売ルート

日本国内でFUTURAが販売されていたルートは主に3つありました。

2002年頃まで 当時アプリリア正規輸入代理店だったボスコ・モトが正規販売
2002年頃から 旧アプリリアジャパン(現ピアッジオグループジャパン)が正規販売
2004年頃から レッドバロンが他国仕様車を並行輸入して独自に非正規販売

上記の複数ルートでFUTURAが新車販売された後は下取りや個人売買も含めて中古売買が繰り返され、現在では流通ルートが不明な車体が多くサポート依頼先も判別困難となっています。

メーカーのサポート体制

FUTURAに限っては日本正規代理店でのサポートは皆無です。
日本の大手バイクメーカーのような「どのような販売ルートであっても自社製品に責任を持つ」サポートは期待出来ません。明らかにリコール対象にすべきFUTURA固有の不具合でさえ完全に放置され、日本国内では正規代理店でもFUTURA純正パーツの入手が困難です。

ショップのサポート体制

現在のアプリリア正規販売店でも相談程度であれば受け付けていただけますが、FUTURA固有のトラブルを解決出来る整備士さんのほうが少ないでしょう。
並行輸入車のFUTURAを販売していたレッドバロンは正規販売店ではなくても全国のチェーン店で修理や整備の実績がありある程度のサポート情報と技術を持っています。ただし、レッドバロンは「レッドバロンは会員制のため非会員様からのご依頼を承ることは出来ず、他販売店で購入したバイクの整備や点検は出来ません」と公式に断言している通り、レッドバロン以外で入手したFUTURAのサポートは原則断られます。
私がFUTURAオーナーだった頃は個人経営の修理専門店に持ち込んで相当な工夫をしていただいて何とか車体維持を続けていただいてました。

FUTURA純正パーツの入手

FUTURAは2003年に生産終了し、日本国内の法規制に基づく生産終了後10年のパーツ供給義務期間も過ぎていて、正規代理店経由では多くの純正パーツが供給終了しています。供給があったとしても正規代理店店頭で純正パーツ単品だけの購入も困難です。

日本国内の一部のネット通販業者が海外からFUTURA純正パーツを取り寄せて販売していて、時間や送料等の余計なコストがかかりつつも比較的簡単に純正パーツが入手出来ます。海外の一部の通販サイトでは日本国内からでも簡単な英語で直接注文するだけで購入は出来ます。

中古パーツであれば日本国内のヤフオク、海外サイトではeBayで比較的多く出品されています(比較的多い、というだけで十分な量ではありません)。

大きな破損や故障が起きても修理に必要な純正パーツが手に入らない覚悟をしておきましょう。

FUTURA公式マニュアル・パーツリスト

整備や修理に必要な整備マニュアル(日本語)パーツリスト(英語)です。

公式日本語マニュアル

公式パーツリスト

FUTURA中古車両の購入前に絶対チェックすべきポイント

FUTURAの中古車両を購入する前にチェックすべきポイントを重要度順に紹介します。
特に※最重要※重要と記したポイントは必読です。

燃料コネクターの破損とその対策(※最重要)

ガソリンタンクとEFIをつなぐ燃料ホースの間に着脱式のプラスチック製コネクターが軽い衝撃でも破損しやすくガソリン漏れのトラブルが発生します。最悪の場合、漏れたガソリンが引火してFUTURAが炎上します。
この燃料コネクターは絶対に確実に金属製コネクターに交換しましょう。


前述の「明らかにリコール対象にするべきレベルのFUTURA固有の不具合」はこの件のことで、他国ではリコール対象になっているのに日本国内ではリコール対象になっていません。以下の画像の通り、プラスチック製コネクターはオス/メス共に破損しています。

既に該当するアプリリア純正パーツは金属製に仕様変更されていてその金属製パーツと交換するだけです。純正パーツ以外でもAF1racingやeBay等のサイトから互換パーツが入手可能です。

中古のFUTURAを購入する際は、このコネクターが対策済であるか=金属製コネクターに交換されているか販売店に必ず確認を求めましょう。現状渡しが条件の個人売買であれば売り主に燃料コネクターの現状確認を要求しましょう。

繰り返しますが、プラスチック製コネクターを装着したままの状態でエンジン始動と走行は絶対避けましょう。極めて危険です。

レギュレーターのコネクター焼失(※重要)

メインハーネスとレギュレーターを繋ぐ茶色のコネクター(車体左側)が過剰な発熱により変形や焼失を起こして走行不能になることがあります。
左側の外装を外し、茶色のコネクターが溶けている・変形している・焦げている等の状態であればすぐに配線の状態を確認しましょう。

運よくダメージの無い場合もありますが、このコネクターは遅かれ早かれ配線ごと焼失する可能性があります。この対策としては確実な方法が無く、アプリリア純正品以外の社外レギュレーターと交換、およびコネクター部分の配線の加工が最善といわれています。

コネクターとその周辺の現状を購入交渉時にショップまたは売り主に確認してもらうことを強く推奨します。

ホース類・ケーブル類の劣化・破損(※重要)

ホース類やケーブル類の経年劣化は工業製品であれば避けられませんが、FUTURAのホース類やケーブル類は劣化してほぼ確実に破損する箇所があります。
タンク周辺に配置されている透明PVCホースは特に劣化しやすく、原型を留めないほどに崩壊してエンジンが正常動作しなくなります。新車登録から10年以上経っている個体はほぼ例外なくエンジンが正常動作しなくなるほど劣化しています。透明PVCホースはエンジンが動作していても早めに高耐久ホースと交換することをお勧めします。

また、エンジンのヘッド周辺にホースやケーブルが全く耐熱対策されないまま接触していますので、こちらも焦げたり破断したりしていないか確認が必要です。

FUTURAの中古車両を購入する前には手間がかかってもタンクを開けてもらいホース類・ケーブル類の状態チェックを推奨します。

純正車載工具の有無(※重要)

一部の重要な整備作業にFUTURA専用の車載工具が必要になります。
市販の汎用工具では難度が高くなる作業でも車載工具を使えば簡単に済む場合があります。公式マニュアルにも車載工具での作業手順のみ記載されていて、どの規格の汎用工具を使えばいいのかまで記載されていません。専用車載工具での作業が最も手軽で確実です。

  • チェーン調整 専用の車載工具以外の汎用工具では調整が困難
  • エアクリーナーボックスのボルト着脱 専用の車載工具を使えば作業が極めて容易
  • プラグ交換 専用の車載工具を使えば車体の狭い隙間でも容易に作業が可能

FUTURA中古購入の際は専用の車載工具が付属しているのか確認を強く推奨します。

オイルフィルター&フィルターカバーの種類(※重要度は低いが要確認)

FUTURAは生産販売が終了した後に純正オイルフィルターとフィルターカバーの規格が変更されています。つまり、FUTURA用の純正オイルフィルターと純正フィルターカバーはそれぞれ2種類存在します。

(左)新型フィルター3.75inch / (右)従来型フィルター2.75inch
AF1 Racing. 2001-2004 RST1000 Futura から引用

オイルフィルターの面積が足りず油圧が低下する可能性があるとしてオイルフィルターの仕様変更が行われ、それに伴ってフィルターカバーも形状変更になりました。
そこで、FUTURA購入後はフィルターカバーが初期型(新車販売時仕様)または新型(仕様変更後)のどちらが装着されているのか確認を推奨します。
それぞれ適合するオイルフィルターが異なるため、単に「フツーラの純正オイルフィルター」を購入するとフィルターカバーに適合しない製品が届くかもしれないので要注意です。

(上)初期型のオイルフィルターカバーは表側がほぼ平坦。(下)新型のオイルフィルターカバーは長くなっている。
AF1 Racing. 2001-2004 RST1000 Futura から引用

当時のアプリリア日本法人では新型フィルターへの交換を推奨していましたが、他国(イタリア本国やアメリカ等)のアプリリア現地法人は「初期型のものを使い続けてもかまわない」とアナウンスしている場合もあり、新型に交換しなくても問題は無いようです。
私のFUTURAは初期型フィルターカバー&初期型オイルフィルターのまま使い続け、約1か月間の長距離ツーリングをしても冨士スピードウェイのストレートで最高速を出しても何のトラブルも発生しませんでした。

シートの変形(※重要度は低いが要確認)

シート左側の前端部分がライダーの荷重により変形している場合があります。

放っておいても実走行に大きな影響はありません。ただし、見た目が悪いことと変形した前端部分がフレームに擦れて細かいキズが徐々に増えていきます。気になるのであればシート下に硬質スポンジ(おおよそ15mm程度)を貼り付けるだけで対策出来ます。

スターターリレー(※重要度は低いが要確認)

FUTURAに新車から装着されている純正スターターリレーは他のバイクと比べて故障しやすい傾向にあります。
特に、バッテリーが弱っているときに無理にセルを回してエンジンを始動させようとするとスターターリレーが突然死する事例が多く、故障すれば当然ながらセルが回らなくなりエンジン始動が出来ません。
中古車両購入前にはセルの回り方が弱くなっているのであれば要注意です。そもそもバッテリー自体が弱っている場合もスターターリレー故障の要因となります。

対策としてはヤマハ純正パーツの高耐久性スターターリレーに無加工で交換するだけです。
その流用可能なヤマハ純正スターターリレーはFUTURA純正品と形状が完全に同一でありながら、FUTURA純正品よりも耐久性が高く故障の頻度が激減します。突然死が心配であれば予めヤマハ純正スターターリレーに交換しておくか予備に買っておいても損は無いでしょう。シートを外すとすぐに判る場所に装着されていて特殊な工具も不要です。

私のFUTURAはスターターリレーが即死したときはヤマハ純正パーツ 3UF-81940-00-00 (V-MAX適合品) に交換しました。現在も新品で入手可能です。

パニアの有無(※確認推奨)

パニアケースは無くても走行性能に全く問題ありません。しかし、既にFUTURA専用パニアケースは新品での入手がほぼ不可能になっていることと、FUTURA対応の社外パニアステーが存在しないためパニアは純正品しか選択肢がありません。

FUTURA専用パニアケースは本体のデザインと見事に調和しつつ高い実用性も兼ね備えた秀逸なアクセサリーで多くのFUTURAオーナーに高評価を得ています。中古でFUTURAを入手する際には純正パニアケースが付属しているか確認を推奨します。

お勧めの社外品アクセサリー

 FUTURA専用の社外製品で特にお勧めは以下の2つです。私がFUTURAを新車購入した直後に取り付け使い勝手も良好でした。

HEPCO&BECKERトップケースステー

FUTURA専用としては唯一のトップケースアタッチメント。
HEPCO&BECKER製トップケースを装着出来て、トップケースが無くても単体でリアキャリアとして使え、ツーリングネットのフックをかけるステーとしても使えます。

R&Gフレームスライダー

FUTURA専用かつ外装無加工で装着出来るフレームスライダー。
FUTURAは一回の転倒で10~20万円の修理代がかかり、外装パーツは新品での入手も困難になりつつあり、しかも電装系パーツの一部がフレーム左外側に直付されていて、万が一転倒してその電装系パーツが破壊されたら一発で不動車となります。転ばぬ先の杖として装着を強くお勧めします。立ちゴケしてしまったときのダメージを大幅に軽減してくれます。
私もFUTURAで左右1回ずつ立ちゴケしたことがありましたが、車体へのダメージは無くスライダーの表面にキズが付いただけで済みました。

FUTURA中古車の適正価格

FUTURAを新車から約10年所有し維持していた元オーナーとしての個人的な意見としては、これが適正価格と考えます。

  • 1年以上の保証(特に電装系の修理対応有り) 20万円以下 
  • 保証無しの現状渡し 10万円以下

「エンジン絶好調!外装極上!ワンオーナー!」といった謳い文句は全く信用出来ません。私のFUTURAもエンジン絶好調かつ外装極上でワンオーナーを通しましたが、電装系のトラブル連発で何度も不動になり、純正の重要保安パーツさえ入手に手間とカネがかかり、修理専門店にパーツ作成を依頼したりサスペンションをフルオーダーメイドしたりで、最終的にBMWやDUCATIの新車が買えるほどの修理代がかかりました。
中古のFUTURAは当たり外れが激しくハズレ車両を引くとトラブル頻発でろくに走れずカネばかりかかり、短距離さえ走れない長距離(自称)スポーツツアラーと化します。買取価格もせいぜい一桁万円です。

それでもFUTURAに乗りたい方へ

自分がFUTURAオーナーだった頃は「かっこよさに惹かれてFUTURAを買ったけど不具合や故障が多過ぎて手に負えず手放しました」と嘆きつつ、数か月か数年でFUTURAを手放した元オーナーさんの話を何度も聞いてきました。
趣味のバイクを見た目優先で選ぶのも有りだは思いますが、FUTURAはバイクとして最低限の機能を維持するだけでも手間もカネもかかり、それでもトラブルが解決しないこともあり得ます。面倒なことはなるべく避けて安心して走りを楽しみたいのであれば、故障が少なく安いバイクが他にいっぱいありますので、無理にFUTURAは選ばないほうがいいでしょう。

基本性能が全然足りてないマシンなれど、実際にFUTURAに乗っているときは独特の楽しさがありました。無数にあるバイクの中からFUTURAを選んだ暁には、連発する不具合やトラブルと無駄な出費を覚悟のうえでFUTURAのある生活を楽しんでいただきたいと願います。

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