一時的にバイクに乗らない時期があったものの、大型二輪免許を取得してからは大型バイクばかりを乗り継いできました。バイクが趣味であり大型二輪免許を持っているなら大型バイクに乗るべき、くらいの主義を貫いてきた私が、2019年にK1300Sを手放したとほぼ同時に小型150ccのSUPRA GTR150に乗り換えました。
免許も資金も体力もあるのになぜ大型バイクから離れたのか、自分の気持ちを整理するためにもここで書き残しておきます。
初心者ライダーから憧れの大型バイクライダーへ
まだ普通二輪免許(400cc以下)を取得したばかりだった初心者の頃、未経験の大型バイクに憧れて忙しい日々の合間に大型バイクの実技試験対策のため練習場に通い、免許センターで2回目の試験で合格しました。大型二輪免許を受け取ったその帰り道にバイク屋へ直行し1200ccマシンの契約を済ませました。
初めての大型バイクにひたすら歓喜し暇さえあれば大型バイクに乗っていました。仕事や家庭の事情で乗る機会が減りつつも、なんとか長期休暇を作り日本各地や海外へツーリングに出かけ、大型バイクを通じて自分の世界が広がり人脈も増えていきました。
135ccバイクでバイクへの価値観が激変
大型バイクに対して夢を見る時期も過ぎ、より冷静にバイクと向き合えるようになってからは大型バイクの弱点を理解し始めるようになりました。不要なほど大きくて取り扱いが面倒・排気音がうるさくて迷惑になるときがある・近所を移動するには過剰なスペック、こんなことを煩わしく思うことが増えたことをきっかけに日頃の足として小型バイク増車を考え始めました。
apriliaの大型バイクFUTURAを所有していた頃に「125ccクラスの小型車を日頃の足として使いたいけど必要最小限の範囲で高速道路も走りたい」という条件で増車したセカンドバイクがSPARK135でした。
あくまでもメインの大型バイクの補完として買い足しただけで過剰な期待もせずに買ったバイクでしたが、結論から言えば、このSPARK135がバイクに対する自分の価値観や意識が激変するきっかけとなりました。
スーパーカブとほぼ同等の非力なエンジンと4速ロータリーながら高速道路は一区間程度なら走れなくもない、この使い勝手の良さのおかげで大型バイクを乗り出すほどではない場面で活用する機会が増えました。しかも、騒音が静かで深夜早朝でも迷惑にならず、市街地や渋滞でもエンストの心配が無く、
車体が小さくて軽くて駐輪や押し歩き移動も楽々。SPARK135は徐々に日常生活に自然に馴染むようになり大型バイクに乗る機会は減っていきました。
FUTURAからK1300Sに乗り換えてもSPARK135の出番は減らないどころか逆に増えていき、大型バイクでは実現が難しかった宗谷岬年越しツーリングもSPARK135だからこそ実現できました。
大型バイクでの高速道路の快適な移動や怒涛の加速等の魅力も捨て難く、今まで大型バイク所有を絶やさなかった思い入れもあり、「このままでは大型バイクに乗らなくなるかも」という謎の危機感を抱いたこともあり、SPARK135のほうを手放しました。
大型バイクのツーリングで自分が本当に必要なものを悟る
再び大型バイク一台のみの体制となりましたが、仕事が忙しくなりバイクにのる機会そのものが減っていた頃。決定的に大型バイクから心が離れた出来事が2018年真夏の東北弾丸ツーリングでした。
K1300Sは当時のBMWのフラッグシップモデルで一般ライダーでも0-100km/hは2秒台、最高速は300km/h近くまで出せる高性能マシンです。高速道路の長距離クルージングでこそその高性能を発揮出来て弾丸ツーリングにはピッタリ・・・のはずが、高性能過ぎたが故にまさかの苦痛を感じることとなりました。
K1300Sはスピードメーターを頻繫に確認していないと気がつかないうちに人には言えない速度で快適巡航してしまうことが多く、スピード違反を気にするあまり並走する四輪車やミラーに映る後続車を何度も確認して覆面パトカーか否かを逐一判定し続けました。K1300Sは120km/h区間を上限120km/hで定速巡航しているときが最も快適で、80km/hや100km/hでは遅過ぎて逆に疲れが溜まる一方でした。
一般道では更にスピード超過を気にする頻度が増え、怒涛の加速も次の赤信号や一時停止で減速するから無意味かつ危険でしかありません。
そして真夏の東北弾丸ツーリングに出かけたときのこと。
高速道路は渋滞だらけ、一般道も渋滞と信号待ちで停車→発進→低速走行の繰り返しで、股下のエンジンから立ち上がる高熱に全身が包み込まれ、真夏の熱気とも相まって灼熱地獄になるだけでなく、水温計の温度が上がりラジエーターファンが回り続けてオーバーヒートの心配も絶えませんでした。
そんな数日間のツーリングから帰宅し、旅の思い出が「スピード超過と暑さとオーバーヒートに注意力を奪われ続け、旅先の思い出は少しだけ」でした。
そのとき悟った正直な気持ちはSNSに書き残してあります。
ディーラーに並ぶ高性能大型バイクを見たときの確信
ツーリングから約1年後、故障が発生したこととリコールの通知を頂いたこともありBMW正規ディーラーに行き、点検と修理見積もりを待っている間にディーラー内に展示されている新車を一台ずつ眺めていました。
K1600、R1250GS、S1000RR…どれも最新の高級高性能マシンばかりで憧れるライダーも多いでしょう。かつて大型バイク一辺倒だった頃の私であれば楽しく眺めたはずだったのに、その展示車を見ても「こんな大型バイクに乗ってもスピード超過と酷暑とオーバーヒートが気になるだけで辛いだろうな」としか思えず、小型であるはずのC600さえ無駄に大きく暑苦しそうに見えました。
引用元 : https://www.bmw-motorrad.de/
真夏の弾丸東北ツーリングで体験した、市街地で何度も信号待ち・高速なのに渋滞で数十kmモタモタ徐行・速く走れてもスピード取締を気にしてばかり、という絶望的な苦行シーンが蘇ったと共にK1300Sに乗り続ける意欲が急に失せてしまいました。
店員さんから修理見積りの回答を頂いて即、
「このまま買い取りしていただけますか?」
と言ってしまいました。
続けて買取見積もりを依頼し、おおよそ想定通りの金額が提示されディーラーにK1300Sを置き去りにして帰宅しました。書類や付属パーツを後日ディーラーに届けて買取契約書にサインし、大型二輪免許取得から大型バイクを絶やさなかった私の大型バイクライフがここで一旦途切れました。
久しぶりにバイクの無い生活となりつつも、1年以上前から気になっていたSUPRA GTR150を本気で購入検討し始め、徹底的に下調べをしたうえで契約・納車となりました。大型バイクも一通り候補に挙げましたがどれも決定的に欲しいとは思えませんでした。
150ccバイクに乗り換えて満足度UP・精神的負担DOWN
納車後間もなく例の感染症大流行が始まり外出自粛によりバイクに乗る機会は激減しましたが、納車されて久しぶりに乗った小さなバイクは加速も最高速も150cc相応なれど、交通の流れに自然に乗れて不要なスピードや加速も無く、騒音も静かでストレスが大幅に減りました。
大型バイクで運転に集中していた頃には気付けなかった周囲の景色、建物、音に気が向くようになり、ちょっとした外出でも楽しくなりました。大型バイクに乗っていたことで出来た人間関係も乗り換えが原因で希薄になることもなく、むしろマイナー車に乗り換えたことで新たに知り合える人も増えました。
自分の気持ちに素直に従っただけ
多々書き連ねましたが大型バイクを否定しているわけではなく、今でも大型バイクは大好きなままです。新型の大型バイク発売のニュースリリースがあれば一通り目を通し、今でも欲しい大型バイクがあって実走レポートを読んだり観たりしているくらいです。大型二輪免許を持っているか否かは関係無く、単に自分の方向性が変わり自分の気持ちに素直に従っただけでした。
今後また気分次第で大型バイクに再び乗ることになるかもしれませんが、バイクが変わっても自分の気持ちにウソをつかずより満足度の高いバイクライフを送りたいと思います。
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